一歩も家を出ない上、一日12時間睡眠、という完全体勢で臨んだにも関わらず、土日の間に風邪を治すことは叶わなかった。それどころか悪化した。やはり「かかったな」と思ったら何かの風邪薬を飲まないといけないのだろうか。俺は、「かかったな」と思ったら、起きてる間は1時間に何度もうがいして、のど飴をなめまくって、充実野菜を飲みまくって、そしてウンザリするほど寝る、あと馬鹿みたいなペースで放尿する、ということを心掛けているのだけれど、それだけでは不足だというのか。これだけのケアを、初期症状が顔を覗かせた程度の頃からさせておいて、症状が下り坂になるのは「もう勘弁してくれ」ってくらい悪化してからというのはどういう了見だ。貧民から搾り取れるだけ搾り取る極悪大名かお前は。俺が思うに、多分風邪ウイルスの連中も、何のメリットもなくこんな蛮行に及んでるんじゃなくて、俺が苦しむことによって生じる未知のエネルギー、ここでは仮に「苦素(くそ)」と呼ぶことにするが、その苦素が、アリにとってのアブラムシのケツ汁と同じくらい、奴らにとって甘くておいしいからこんな酷いことをするのだと思う。だから俺がどんなに平身低頭、丁重にお帰り願っても、にっくきウイルスどもは、悪徳守護・悪徳地頭の如く、苦素の取立てに精を出すというわけだ!
じゃあいい加減に諦めて薬を飲めよ、という話になるのだけれど、俺はここ数年、風邪薬を使うという行為は「生き物としての自信のなさ」みたいなものの表れではないのか、という風に考えていた。大した未来が待ち受けているわけでもない身分なのに、「この若さからもう薬に頼るようでは、年を取ってから困るではないか!」などと思っていたのだ。だからなるべく薬を使わずに治すよう心掛けてきたのだけれど、はっきり言ってそれで簡単に治るなら風邪薬がバカ売れしたりするわけがないのだった。風邪薬を作る必要すらないのだった。今日の昼くらいにやっと気付いた。大バカ。せっかく風邪薬のある時代に生まれたのだから素直に使わねばなるまい! というわけで薬局に行って症状を説明し、やたら青ひげの濃いおっさんが早口でお勧めしてくれた薬を買うことにした。正直何を言ってるのかよく分からなかったけどまあ効くんだろ。と思って財布を取り出したら、1600円近い金額を請求されたので本気で「え?」と聞き返しそうになった。風邪薬たった一瓶でこんな金額取られるのか。効かなかったらただじゃおかねえぞと憤慨しつつ帰宅、即効で飯食って服用。するとどうだろう、みるみると鼻水が…溢れてきて…。咳が…激化し…。熱が…。絶賛悪化中です! いい加減にしろ! あの青ひげオヤジ…! でもひょっとしたら早口で「これマジで効かなくて笑えるんだけど高くて儲かるからオススメしとくよ」みたいなことを言ってて、俺がそれを聞き逃したのかもしれない。だとしたら悪いのは俺、か…。それ以前に日記なんか書いてるんじゃねーよバカって話だね。ごもっとも!