機微

2003年11月17日

ムーブメントの最先端を常にチェック、時流を完璧に捉え、社会という大波を華麗に乗りこなして日々を面白おかしく生きているサイバーキッズ、こと、ネット界の住人・ネチズンの皆さんにおかれましては、もう当然の事ながら今話題の映画、キル・ビル、1回と言わず2度も3度もご覧になりまくって、やれあのシーンはどうだ、やれこのシーンはそうだ、などと、喧々囂々の議論の繰り広げてらっしゃる事と存じます。ナウいね。かっこいい。映画っていいよね。分かるわー。とか言いながら俺は全然映画を見ない人間なので本当に困っている。どいつもこいつもキル・ビル見過ぎ。微塵も話についていけない。誰だよタランティーノ。サザエさんのタラちゃんにちょっとかっこいいあだ名付けただけなんじゃねえのって勘ぐりたくなる。まあそれは言い過ぎた、タランティーノくらい知ってるよバカヤロウ。あ、これ、「ファッキンジャップくらい分かるよバカヤロウ」へのオマージュね。オマージュ。まあタランティーノとか言いながら浮かんできた顔はジャン・レノなわけだ。お前らは本気にしないだろうけど俺は本当にこの程度の知識しか持ち合わせてない。ちょっと映画好きを自認しているませた小学生に完敗するレベル。ここ5年くらいで映画館に行った記憶が3回しかないからね。リングとシベリア超特急3と黄泉がえり。いやーどれも映画史に残る名作だよね。トップ10に入る。ただし俺の中での映画史だけど。もうマジでそんくらいの勢いで映画を見てない! 映画の一番鮮烈な思い出が、「中学生の時にジュラシックパークを見に行って、あるシーンで、誰かが恐竜に危うく足を食われそうになって、恐竜が口をバクッ!! とかやる瞬間に、見てる俺の足がとんでもない勢いでビクッ!!! ってなって、友達に爆笑された」っていう悲惨なものだからね。いやーでもあれはびびるっつーの。っていうかそろそろ読んでる人の大半が「なんだこの文化度の低い映画土人は!」って感じでマジギレしつつあるんじゃないかって気がしてきた。ごめんねこんなんで。ほんとごめん。多分すごい勿体ないことをしてるっていうのは分かってる。見れば見たで割と楽しめることも分かってる。でもね、なんかね…、すいません………。

まあとにかく俺の映画の見なさときたら、何か信念があってそうしてるんじゃないかとすら思われる領域に達しているので、当然の如くキル・ビルも見てるわきゃないのだけれど、ここしばらく、俺の数少ない巡回先が、どこもかしこもキルビルキルビルキルビルと騒いでやがるもんだから、俺の中の「映画見なさすぎてやばいかもコンプレックス」が著しく刺激され、知らず知らずのうちに心労が溜まったのか、なんなのか、とにかく、先日、「見てもいないどころか、ろくにどんな話かも分かっちゃいないキル・ビルを、夢の中で見に行く」という、一般的に言う悪夢とはちょっと違うけれども、それでもその裏に潜む自分の深層心理などを軽く憶測するだけでも気分がどんよりしてくる点から言って、悪夢と言ってもなんら差し支えないような、そんな夢を見る羽目に陥ったのだった! 俺のキル・ビル知識というのは、「タランティーノが監督・日本が舞台・その日本観が狙い澄ました滅茶苦茶さ・ GOGO ナントカとかいうキャラが出てくる」という浅すぎる情報にのみ構成されているので、当然夢で見たキル・ビルの内容も、その浅い知識に準じたものとなっていたわけなのだが、一体どの程度、本物のキル・ビルと物語が符合しているのであろうか。ちょっと気になるので、あんまりはっきりとは覚えていないのだけれど、俺が夢で見たキル・ビルについて、ここに書き留めておこうと思う。

まず、古めかしい木造建築や、古式ゆかしい日本庭園、というか今考えるとバカ殿様のセット以外の何物でもないのだけれど、とにかくそういった場所でのシーンしか記憶に残っていないところから推測するに、舞台は恐らく江戸時代の日本であったと思われる。白い砂利が敷き詰められた庭、立派な松の木の枝に仁王立ちし、悪鬼羅刹の如き表情で、庭に陣形を敷いている3,4人の忍者を睨み付ける、黄色い全身タイツのパツキンギャル。顔はカイヤに似ている。細かい事情などは全く分からないが、とにかく戦闘状態にあるようで、パツキンギャルはものすごく下手な日本語で忍者達を挑発し、忍者達はそのたびに、無駄な SFX を駆使した背景(メラメラと燃えさかる炎や、流れ星の流れる宇宙)を背に怒り狂う。そして忍者が一斉に手裏剣を投げたその刹那、パツキンギャルの表情は一変。鋭い眼光、ブラックアウトした背景に、キュピーッと、「このタイミングだ!」と言わんばかりの漫画的な一筋の効果線が入ったかと思いきや、パツキンギャルは怒声と共に、両手に持ったトンファー状のもので手裏剣を弾き返した。このシーンが単体で異常に記憶に残っている。前後の流れは全く覚えていない。というか多分そんなものはない。そして、もう一つ記憶に残っているのが階段落ち風のシーンで、誰がなんと言おうとあれは池田屋であった。少なくとも映画を見ている俺は「あ、ここは池田屋だ」と思って見ていた。中央にドーンと置かれた階段、半分上ると踊り場のようなところがあり、左右に階段が別れている。今の冷静な俺が考えるとそれは明らかに洋館の造りだが、映画を見ている俺はその和風テイストにいささかの疑問も抱いていない。その池田屋で、先程の主人公らしきパツキンギャルが侍たちと飛んだり斬ったりの大立ち回りを演じるわけだが、そこに登場するのがキーパーソン(だと映画を見ている俺は何故か認識している)の GOGO 幕張。「GOGO」までしか覚えてなかったのでしょうがない。むしろ「張」まで合っていたことを褒めるべきだと思うわけだが、それはともかく、その GOGO 幕張、分かりやすく言えばエキセントリック少年ボーイの歌に出てくるカーボウイ的な位置づけとでも言おうか、「敵かな? 味方かな?」というキャラで、時折現れてはミステリアスな言動をして去っていく不思議な巨乳美女であった。これは実際に夢でそういった登場シーンを見たわけではなくて、多分その池田屋のシーンが初登場だったはずなのだけど、何故か、夢の中で映画を見ている俺は、GOGO 幕張をそういったキャラなのだ、と理解していたという話。そして、その池田屋のシーンで、パツキンギャルと GOGO 幕張が戦うことになったのだが、つばぜり合いをしながら、 GOGO 幕張の口から驚くべき事実が告げられることになる。というところで夢の中での辻褄合わせが破綻。ついに映画の中に俺が登場することになる。というかある時点を境に、それはもう映画でなくなっていて、夢の中での現実として、俺はパツキンギャルと共に戦うことになっていたのだった。こうなってしまうともう滅茶苦茶で、俺が魔法を使ったり、その末に殺人の罪を問われて警察に終われ、下水道に逃げ込んだり、というかいつの間にか舞台が現代になっていたりする。破滅的。もうキルビル全然関係ない。

まあそういうわけで、ネットでの色んな人の言説に影響を受けて映画の夢を見てしまう、信じられないくらい頭の弱い人間がここにいますよ、という報告でした。さて、朝の6時半だけどそろそろ寝るか。ろくな夢見れそうにない。

Posted by iwakura at 06:36