いくらなんでもここしばらくの俺は甘すぎた。何物をも引き裂く鋭い牙や爪を仕舞い込み、飼い慣らされた振りをし、あの屑組織に媚びへつらったのは、大いなる間違いであった。本来、俺は孤高の肉食獣。ナイフみたいに尖っては触るものみな傷つけ、仲間はバイクで死に、ガードレールに花を添えて青春あばよと泣き、卒業式だというけれど何を卒業するのだろう、ララバイララバイおやすみよ、ギザギザハートのアップリケが入ったパンツを身体検査がある日に履いて行っちゃって大ピンチ、みたいな、なんか良く分かんないけどとにかく危険な男。ハードボイルド。俺の後ろに立つな。(臭いから) そんな俺が一瞬と言えどもあんなものに尻尾を振っていたとは、何たる不覚であろうか。
「大学」。俺にとって大学とは、本来爆破したり水攻めしたりする場所であって、決してそこで勉強したり飯を食ったりするような所ではなかったはずだ。それがどうだ、ここしばらくの俺ときたら、大真面目に出席を取り、ノートを取り、一冊3000円もする教科書を何冊も買い、あまつさえ、今年中に60単位を取るなどという理解不能の目標まで掲げ出す始末。とんだ腑抜け野郎だ。こんな事でどうする。俺の生き様は、もっと情熱的で、多感で、それでいて時に遠い目をし、傷つき、傷つけ、時に憎しみ合い、そして抱きしめ合い、遠ざかる雲を見つめて、まるで僕たちのようだねと君が呟く、風に吹かれて歩いてゆくのさ、白い雲のように。なんか最後の方は猿岩石が混入したけど、とにかくそんな生き方だろうが。そんな猛き魂を持った俺が大学通いなどでくすぶっていていいのか? そうだ、いいわけがない。
という、長くそして間違っている自己啓発の末、本日、とうとう大学を丸一日サボる事に成功した。やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
そして全身を支配する、あの罪悪感の入り交じった開放感、絶望感に裏打ちされた期待感。自転車に乗りながら考える。これから一日、何をして過ごそう。そしてこれから一年、どうやって生きていこう。俺はゲーセンで2時間ばっかし時間を潰し、ラーメンを食い、本屋に寄って、いかにも大学に行ってきたようなツラで帰宅し、バイトの時間まで寝て過ごした。誰か俺を本気で殴ってくれ。俺、やっちゃったよ。また、やっちまったよ…。