裏マンガアワード

2003年12月24日

面白い漫画について語ったのならつまらない漫画についても語らねばなりますまい、ということで勝手に裏マンガアワードを開催。俺は比較的漫画を愛してやまない人間なので、そう滅多なことでは買った単行本に難癖を付けるような真似はしないのだけれど、やっぱり物事には節度というものがあってだね、いくら温厚な英国紳士といえどもヒシャクで人糞ぶっかけられたらブチ切れるわけで、漫画馬鹿の俺にしたってそりゃ、ピリオドの向こうまで突き抜けちゃった人外魔境絵巻、芸術的つまらなさを誇るファッキンコミックを定価で掴まされたらね、もうプンプン! ですよ。こらーっ! みたいな。ほんとね、金返せってのはまさにこの事だよバカヤロウ。マネー・バック! まあそんな極めていんちき臭い英語で叫んだところで金は返ってこないわけで、それなら年末のドサクサに紛れて好き放題サイトで書いちまえ、と思って書き始めた次第。本当はこんなこと、MANGA-LOVER にあるまじき行為だって良く分かってるんだけど、それでもどうしてもこの2作品については、みんなに伝えておきたくて………。届けボクの思い! っていうかもうね、ここまでつまらないと逆にオススメというか、是非とも読んで「マジつまんねえなこれ…」とがっくり肩を落として欲しい。なんつうか必要以上につまらないものっていうのは不思議と人の心を引きつけてしまうもので、恐らく現時点で「そんなにつまらないなら読んでみたい」みたいな事を思っている人もいると思うんだけど、あのね、普通につまんないから。つまらない以外の事を期待しちゃだめだよ。真顔でつまんないよ。無口になるよ。それでも、俺はみんなに読んで欲しい。読んで後悔して欲しい。できれば自分の金で新品を買って欲しい。これは俺からのクリスマスプレゼントです。というわけで、裏マンガアワード、一人で開催。順位の付けようがないので紹介のみで。

・「空飛ぶアオイ」 福島聡 ビームコミックス

昨日は書きもしなかったコミックスレーベル情報まで書いてる辺りに俺の「マジで読んで欲しい」度の高さを感じとって欲しいわけだけども、さて、この「空飛ぶアオイ」、現在コミックビームにて「少年少女」という一話完結の普通に面白い漫画を描いている福島聡先生がモーニングで連載していた作品で、全7話なのに3話までしか掲載されなかったという、ジャンプ編集部も「そりゃまずいだろ」と心配しかねないエピソードを持つスーパー打ち切り漫画。いくらなんでも酷い仕打ちだよね…とか思って読み始めると、あら不思議! 10ページくらい読んだあたりで打ち切りに納得し始める自分がいるからね。こいつぁ…こいつぁやばいぜ…(ゴクリ)。

第一話の粗筋。普通の OL だけどやたら幼い見た目の主人公・アオイは、ひょんなことから謎のコンピュータウイルスに自分の見た目をコピーされてしまう。そのウイルスはコンピュータを破壊しながら移動したり、果てには実体化までしてしまう化け物であったが、なんとその正体は、どこぞの小学生の兄妹が「お姉さんが欲しい」というだけでポポイと作り出してしまった「お姉さんプログラム」なのだった。自分たちが騒動の原因であると気付いた兄妹はアオイの前に姿を現し、事の経緯を説明する。そしてアオイは、その兄妹や、ヒゲ+ハゲ+太めという典型的過ぎるお人好し警部や、「ん OK」という不愉快以外の何物でもない口癖を持った外国人ウエーターなどと共に、そのお姉さんウイルスを捕まえるべく、次のような作戦を立てる。実は、そのお姉さんウイルスには「カボチャが嫌い」というプログラムが施されているので、カボチャで囲まれた場所に PC を置き、そこへウイルスをおびきよせて、カボチャにひるんでいる隙にひっとらえようというのだ! 粗大ゴミ置き場から PC を持ってきた一同は、ウイルスを呼び出すべく、アオイのある能力を利用するのだが、さてその作戦の成否やいかに…?

っていうかなんだよそれは。大概にしろ。自分で書いといてなんだけど「いかに…?」じゃねーよ。どうでもいい。意味わかんないから。マジで。しかもこの粗筋を書くのに3回くらい読み返すハメになって屈辱。俺の頭が悪いのを差し引いても構成が分かりにくすぎる。なんかアオイの空想世界と現実がリンクしてるらしいんだけど、その世界の転換が急すぎて一読しただけじゃ全然分からない。まあね、一読して分からなくても何度も読みたくなるならいいですよ。「攻殻機動隊」とかそうだしさ。でもこの「アオイ」は、なんていうの、「全てを諦めたくなる分かりにくさ」? 「お前が分からせる気ないならもういいよ!」という感じ。もうマジで何の興味も好意もない野郎と二人きり、喫茶店で延々そいつのハッキリしなくて分かりにくくて宇宙規模でどうでもいい話を聞かされ続けてる時の気分とでも言うか、まあきっちりこっちから要点を整理してやって、積極的に話を聞いてやればおぼろげに何かが見えてくるのだろうけど、こっちにその気がさらさらないので地獄のように鬱陶しいだけ、みたいな、そういう感じ。まあ正直なところ1話が一番酷くて2話3話あたりはまだ読めるのだけど、何しろ1話の時点で脳髄がショートしてるので、とてもじゃないけれど取り返しがつかない。全話読み切るのにこれほど苦心した漫画もなかった。唯一の救いは、巻末の福島先生のコメント、「正直この漫画を手にしたアナタの姿がまったく想像つきません」という呟きに見える、悲しすぎるほどの自覚…。

今更フォローになるかどうか分からないけど言っておこう、福島聡先生が今やっている「少年少女」はマジで面白いのでおすすめ。1巻を買った時は「こりゃええ!」と興奮したものだった。女の子が色っぺぇ。あと来年の初めくらいに加筆されて復刊されるらしい「DAY DREAM BELIEVER」は、ラストあたりに「アオイ」的な多重構造の分かりにくさがありつつも、むしろそれをうまいこと面白みに転化できている怪作。読み終わった後に「凄かった…」と溜息をついてしまう。あ、来年の1月31日か。興味があったら皆さんも是非。あと短編集「六番目の世界」もそこそこって感じで。

「2作品」とか言ってたけど、疲れたので続きはまた明日。できればみんなの裏アワード作品も聞きたいナ! ファンに激怒されても知らないけど。

Posted by iwakura at 00:09